インドネシア、ベトナム-教材をから考える日本語教育の学習環境をよくするためには―  

教育学部1年生 笠井南実

 

 

 国際交流基金(2015)²による海外日本語学習者数は、韓国、インドネシア、中国では大きく減少し、オーストラリア、タイ、ベトナム、フィリピンでは20%以上増加していることが分かる。本レポートでは、日本語学習者数が減少しているインドネシア、増加しているベトナムという東南アジア内の国の日本語教育の学習環境、主に教材について詳しく調べたい。この2か国を比較し、今後の日本語教育をどのように進めていく必要があるかを自分なりに考察する。

国際交流基金の「日本語教育国・地域別情報」⁴より、ベトナムとインドネシアの初等教育、中等教育、高等教育、その他の教育機関で使われている具体的な教材を調べた。

 

ベトナム
教材

初等教育

 「2020年期国家外国語プロジェクト」の対象となる小学校では、教科書審査委員会の認可を得た試験段階の教科書が使われている。

中等教育
 「中等プロジェクト」の対象となる中学校と高校では、教科書審査委員会の認可を得た教科書『にほんご6~12』が使われている。また、ハノイ国家大学附属外国語専門高校においては、独自に開発した教科書を使って日本語教育が実施されている。
高等教育
 初級では、『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)と『初級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)、中級では、『中級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)、『テーマ別中級から学ぶ日本語』松田浩志ほか(研究社)、『ニューアプローチ中級日本語[基礎編]』小柳昇(日本語研究社)などが主に使用されている。また、独自の教材を使用している機関や、正規ベトナム語版が出版されたのをきっかけに『NEJ:A New Approach to Elementary Japanese』西口光一(ホーチミン市師範大学出版社)を使用し始めた機関もある。
その他教育機関
 機関によるが、高等教育機関同様『みんなの日本語』と『テーマ別中級から学ぶ日本語』が多く使用されているが、自主教材を使用している機関もある。」⁴
「在ベトナム日本大使館、ベトナム日本人材協力センター(VJCC)、日本商工会」¹といった日本の協力も、ベトナムの日本語教育の学習環境をよくするために大きく関わっている。これらの機関を筆頭に、ベトナムでは日本語教育を行う教員が充実している。「安倍晋三首相は8日、ベトナムのグエン・スアン・フック首相と首相官邸で会談し、ベトナム人に対する日本語教育の充実に向け連携する方針で一致した。日本が目指す介護分野などでの外国人の受け入れ拡大に向け、担い手を育てる。日本語教師の育成事業を始めると説明し、悪質な仲介業者の対策で協力を呼びかけた。」(2018/10/8 日本経済新聞)という記事からも分かるように、今後も日本から積極的にベトナムへの日本語教育の支援が行われることが考えられる。良い教材があるのにそれを教えられる教師が不足していたり能力が乏しければ意味がない。小学校3年生からの第一外国語として日本語教育の導入が始まろうとしている。小学校から日本語教育が行われる理由として、近年、日本企業がベトナムに進出していることから、日本語を使えた方が就職に有利であるからであると考える。

 

インドネシア 
教材
初等教育
 初等教育(小学校)の教授レベルは、ひらがな、カタカナ、挨拶にとどまっていることから、ほとんどの学校では独自に作成したものを使用している。
中等教育
 前期中等教育(中学校)でも、教授レベルはひらがな、カタカナ、挨拶にとどまっているところが多いが、一部の学校では、後期中等教育(高校)で使用されている教材の一部を使って、漢字や文法を取り入れているところもある。
 普通高校、宗教高校の語学系コースでは、『にほんご1、2』(2007年刊行)、その他のコースの選択科目では、『さくら1~3』(2009年刊行)が広く使われている。専門高校の選択科目でも『さくら1~3』(前出)が多く使われているが、観光サービス業務専攻では、『インドネシアへようこそ1、2』(2005年刊行)を使用しているところもある。上記の3つの教科書は、教育文化省と国際交流基金が共同で開発した。なお、2013年の新カリキュラムに準拠した高校日本語教科書『にほんご☆キラキラ』が2017年7月に出版され使われ始めている。
高等教育
 主に、日本で出版・販売されている教材が使用されている。初級は『みんなの日本語』スリーエーネットワークのインドネシア版(International Mutual Activity Foundation Press)が多くの大学で使われている。それぞれの大学で補助教材を作成する場合もある。
その他教育機関
 民間日本語学校では、初中級まで『みんなの日本語』インドネシア語版(前出)を使用する機関が多いが、独自の教科書を作成・使用しているところもある。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターでは、JF日本語教育スタンダード準拠コースブック『まるごと 日本のことばと文化』を使用している。」⁴
「インドネシアの外国語学習環境では、昔から日本の文化との触れ合いがあるが、ほとんどインドネシア語で伝えられ、日本語で伝わったものは少ない。そのため、日本語を使ったメディアが基本的に少ない。また、周囲にいる日本語母語話者や、ネイティブの日本語講師などの数も限られているため、インドネシア人日本語学習者は大体教科書に依存しているのが現状である。」³とある。これらのことから、インドネシアはベトナムに比べて日本語教育の学習環境が満足のいくようなものになっていないことが問題であることが分かる。この結果、「現在の教材は最大限に活用されていない」³と考えられている。「インドネシアで日本語教育 神田外大が拠点」(2018/2/27 日本経済新聞)という記事にも見受けられるように、提携校と協力を行っている大学もある。

 

意見
日本語教育の教材では、日本が作成しそれを輸入して使用していると考えていたが、独自の教科書を作成、使用している方も多いということが分かった。日本のものをそのまま使うよりも現地の人が実情やレベルに応じて、オリジナルで作った方が学習しやすい教材が作れるのではないかと考えられる。このことを日本に置き換えて考えても同じことが言える。現に、日本で使われている英語の教科書は日本の教科書会社が考え、日本の文部化化学亜洋画指導内容を決定している。独自の教科書を作成しているということは、これと同じことだ。ベトナムとインドネシアで共通して使われている教材として、『みんなの日本語』という教材が使われていることが分かった。みんなの日本語では、日常挨拶はもちろんのこと、「~です。~ます。」などの細かい文法事項や文型の教え方が記載されている。また、それに関連したサイトもあり学習者だけでなく教える側も勉強できるような学習環境が整ってきていることが分かる。
教材に関して以下のようにすれば日本語教育をさらに効率よく又充実させることができると考える。近年、インターネット環境が全世界で普及していることにより、海外での日本語学習者に対する支援がしやすくなっている。また、教材としてコンピュータやインターネットを使用するケースも増加している。このことをもっと積極的に活用していくべきだ。しかし導入には多額の予算がかかるという問題点も生じる。これは互いの国がより真剣に取り組むかどうかによるものであると思う。
ベトナムもインドネシアも日本語教育において共通している点は、日本文化との触れ合いを学習の一環として捉え、活用していることである。日本語学習の学習環境を整えるということは、学習者のニーズにどれだけ応えているかということに比例すると考える。ゆえに、教師や日本語を学習できる学校の質によってクオリティが変わるようではいけない。よって、インターネット学習をもっと推進していくべきであると考える。そうすれば、全員が同じくアリティの勉強を行えるため格差がなくなるし、学習意欲の高い人は自主的にどんどん学ぶことができる。このような学習形態をとれるようにしてほしいと考える。


参考文献
1)『ベトナムにおける日本語教育・日本文化教育』 チュオン・トゥイ・ラン お茶の水女子大学比較日本学研究センター file:///C:/Users/kasai%20minami/AppData/Local/Packages/Microsoft.MicrosoftEdge_8wekyb3d8bbwe/TempState/Downloads/21_123-129%20(1).pdf
2)「2015年度海外日本語教育機関調査結果 (速報値)2016/11/10 」
2016年11月10日 独立行政法人 国際交流基金
https://www.jpf.go.jp/j/about/press/2016/dl/2016-057-2.pdf
3)『インドネシアにおける日本語教育事情 (特集 : アジアの中の日本)』  ハリ, スティアワン 東京外国語大学日本専攻http://repository.tufs.ac.jp/bitstream/10108/81242/1/isre019012.pdf
4)国際交流基金ホームページ「日本語教育国・地域別情報」https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2017/indonesia.html#KANKYO (2019年1月11日閲覧)
5)スリーエーネットワーク
http://www.3anet.co.jp/ja/141/

©2014 Yoshimi OGAWA