Ⅱ 東アジア

課題

 

1 中国 
 1949年の新中国建国後まもなく、外国語教育を重視する政策のもと、大学での日本語専攻が設置されるようになった。文革期には停滞するものの、日中の国交正常化以降、日本語ブームを迎えた。1990年代以降は、日本語・日本文学専攻の大学院修士課程が設置され、90機関に及ぶようになった。中国の日本語教育の特徴の一つが、高等教育機関で学ぶ学習者数の割合が多く、学習者総数が世界一位であるという点である。中国の日本語教育の変遷についてまとめよ。


2 中国「大平学校」 
 日中平和友好条約の締結を背景に、大平首相と華国鋒国家主席の間の合意により、日本研修センター(通称、大平学校、現、北京日本研究センター)が設立された。この学校は、現職大学教員を中心とした日本語教師の再教育を目的とし、1981年より5年間に600名に及ぶ修了生を送り出した。修了生はその後の大学の日本語専攻課程の発展に中心的な役割を担い、日本語人材の育成に携わってきた。大平学校の設立の経緯や教育内容、修了生の活動についてまとめよ。


3 中国朝鮮族 
 中国東北三省に居住する中国朝鮮族の人々は、1980年ごろから外国語教育において日本語を重視するようになり、1990年の中国の日本語学習者のおよそ3割を占めるに至った。朝鮮語は語順や助詞など文法的に日本語と共通点があり、中国の朝鮮族は漢語の知識も有する。朝鮮語・中国語バイリンガルの学習者に対する日本語教育はどのような目的で行われたのか、朝鮮族の人々に対する日本語教育の目的と実態と、現在に至る変遷についてまとめよ。


4 中国内モンゴル
 中国内モンゴル自治区は東北三省とともに、日本語教育が盛んな地域である。モンゴル語も朝鮮語と同じく、日本語と文法的な共通点が多く、中国モンゴル族は漢語知識も有する。そうした特徴を持つモンゴル語・中国語バイリンガルの学習者に対する日本語教育はどのように行われてきたのか、その特徴と、現在に至る変遷についてまとめよ。


5 韓国の日本語教育 
 韓国では、植民地解放後、「国語純化運動」の時代を経て、1965年の日韓国交正常化にともない、経済交流や日本人観光客が増加し、1960年代には大学で、1970年代には高校で日本語が第二外国語科目の一つとして教えられるようになった。韓国の日本語教育の特徴は、一時期学習者数が世界一位であったこと、学習者の8割が中学生、高校生であるという点である。韓国の日本語教育がどのように変遷してきたのか、韓国の教育課程や入試制度、その他の要因などを探りながらまとめよ。


6 韓国の日本研究 
 日本語教育と両輪をなす日本研究は、学会の設立により本格化する。韓国では、1973年の韓国日本学会の設立を皮切りに、日本語教育学会や日本学会が各地で設立された。韓国における日本語教育・日本研究を支える学会について、設立趣旨や活動内容を中心にその変遷をまとめよ。


7 台湾 

 台湾は、1945年、日本の植民地支配から解放された。国民党を迎え入れると、公用語は中国語(北京語)と定められ、公的な場での日本語の使用は禁止された。1960年代には、大学に日本語科が設置されるが、李登輝総統の就任は、母語教育や日本語教育に影響をもたらした。台湾では、小学校から必修選択科目として、台湾語や客家語が学ばれる多言語社会であるが、台湾の日本語教育は、言語政策や英語教育とともに、どのように展開したのか、その変遷についてまとめよ。


8 台湾「日本語世代」 
 日本統治下の台湾で日本語で教育を受けた人々の中には、戦後も日本語を高いレベルで保持している人々がいる。彼らは、「日本語世代」と呼ばれ、彼等に対する調査は多く、日本の大衆メディアでも紹介されている。その中で日本語を保持し使用する意味についていくつかの指摘がなされている。「日本語世代」の日本語による活動の意味についてまとめよ。


9 香港 
 香港は、1941年から45年まで日本軍の占領下にあり、学校教育の中で日本語教育が行われていた。現在、香港の人々は、母語の広東語、北京語、英語を理解し、さらに、外国語を学んでいる。早い時期から、香港を訪れる日本人観光客が多く、また、日本製品や日本の大衆文化が浸透したのも早い。香港における戦後の日本語教育の展開についてまとめよ。


10 モンゴル 
 モンゴルにおいて、大学の副専攻にはじめて日本語コースが設置されたのは、社会主義時代の1970年代である。1990年代に入り民主化が進むと、日本からの援助も活発化し、学校教育や、学校外の機関でも、日本語が教えられるようになった。中には、元日本留学生が創設した私立の一貫校(小学校から大学まで)があるが、この学校は、これまで多くの留学生を日本に送り出している。人口比において、日本語学習者数、日本留学者数が世界のトップレベルにあるモンゴルで、日本語教育はどのように展開してきたのかまとめよ。

©2014 Yoshimi OGAWA