Ⅴ  欧州・ロシア・NIS諸国

課題

 

1.日本研究と日本語教育
 1980年代に入ると、欧州(旧西ヨーロッパ)では、大学や市民講座に日本学科や日本語コースが設置され、学習者が急速に増加し始めた。2000年代になると、初中等教育でも日本語科目が加わるようになった地域もある。高等教育や外国語教育は、それぞれ、ボローニャ・プロセスやCEFRの導入により新たな進展を見せつつあるが、各地の日本研究は伝統を維持しながら今日に至っている。各国の日本研究の動向と日本語教育の変遷についてまとめよ。


2.初中等教育課程における日本語教育
 欧州では、外国語教育の早期開始が注目されるにともない、日本語を初中等教育の段階から導入する機関も増加した。日本語学習者数が欧州で最も多いフランスでは(2012年の国際交流基金の調査)、1960年代に中等教育で、1990年代に初等教育で開始されている。イギリスは、日本語学習者の半数以上が初中等教育課程の生徒たちである。また、ドイツでは中等教育教師会が早くから活動を行っている。二つの国を選び、外国語教育政策や日本語教育現場の現状を中心に、変遷をまとめよ。


3.継承日本語教育
 グローバル化により、人口の移動や国際結婚が増加し、親の言語を社会の少数言語として継承する子供たちが増えている。特に移民大国と言われる国の中で、フランスは言語使用実態に関する調査結果を公表している。継承日本語教育はどのように行われるようになったか、二つの国の状況をまとめよ。


4.冷戦時代のソヴィエト
 冷戦時代のソヴィエトでは、世界初の人工衛星打ち上げるなど、科学技術の分野において世界最高峰の水準にあったことは知られている。一方、日本語・日本研究においても、目覚ましい発展をとげ、日本政府から叙勲を受けた学者たちもいる。当時の日本語・日本研究について まとめよ。


5.ロシアの日本研究・日本語教育
 ソヴィエト崩壊後のロシアでは、民主化の波は資料公開や他機関との交流をうながし、研究機関にも大きな環境の変化をもたらした。ロシアの日本語・日本研究は、科学アカデミーや大学を中心に進められ、質量ともにめざましい。民主化後の外国語教育は、学習目的も多様化し、学習者層は初中等教育の段階にも広がっている。日本に地理的に近いウラディオストックでは、初等教育の第一外国語として日本語が学ばれているという。日本研究の変遷とともに、日本語教師の教育観、学習者の学習観、教材、教授法など、日本語教育の現場の特徴についてまとめよ。


6.NIS諸国
 NIS 諸国(バルト三国を除く東欧、中央アジア、南コーカサス諸国)は、独立回復後、市場経済化が進み、中には日本政府による経済援助が行われ、日本人材開発センターやJF講座が開設、日本語教育が始められる地域もある。NIS諸国はいずれも多民族・多言語国家であり、ロシア語教育も行われているが、初中等教育レベルで日本語教育が行われている地域もある。一方、高等教育機関で日本語を第一外国語としている機関もある。二つの国を取り上げ、外国語教育政策とともに日本語教育の現状についてまとめよ。


7.旧東欧圏の日本語教育
 冷戦時代の旧東欧圏と日本の交流は限られていたが、当地の日本研究や日本語教育は高い水準にあった。「東欧革命」語の体制転換は、学術交流や言語教育の方針にも変化をもたらした。体制転換の前後の日本研究や日本語教育について、二つの国を選び、その特徴についてまとめよ。
 

8.北欧
 北欧五ヵ国(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランド)は、かつて、教育の無償化、大学の意思決定に学生が参加するなど、教育における「民主化」や「平等」に取り組んでいる点などで共通点が多い。学術面でも、NIAS(Nordic Institute of Asian Studies)を共同運営するなど、北欧という繋がりで交流が行われてきた。一方、この地域のアジア研究や日本語教育を取り巻く環境や取り組みは様々である。二つの国を取り上げ、アジア研究と日本語教育の変遷についてまとめよ。


9.教師間のネットワーク
 海外では、日本語教師会が設立され、各種催しを展開している地域もあるが、日本語教師の人数が少なく、情報交流や研修の機会が限られている地域も少なくない。昨今はネット上でも教師間のネットワーク作りが急速に進み、情報交換の機会が設けられるようになった。各地で、どのように教師間の情報交換を促進し、ネットワークを強化しているのか、それぞれの試みについて調べよ。


10.日本語コレクション  
 日本語・日本研究に欠かせないのは、日本語の文献である。海外の図書館には、膨大な日本語コレクションを有する機関もある。日本で収集し持ち帰ったもの、日本人が持ち込んだもの、戦争で敵国財産として接収されたものなど様々である。各図書館が所属する日本語図書はそれぞれ独自の来歴を有する。日本語コレクションを有する海外の図書館をいくつか選び、その来歴や特徴についてまとめよ。
 

©2014 Yoshimi OGAWA